
退行催眠療法とは
退行催眠とは、人の人生における過去のある時期に戻って、そのときのことを感情を伴って思い出させるテクニックです。ただし誰もが完全に忘れてしまっていた過去の記憶を劇的にそのときの感情を伴って思い出すものではありません。人は様々な個性や能力の違いがあるので思い出し方もまちまちです。
しかし、その人の過去のトラウマや、長期にわたるストレスがどういうものだったのかを見極めなければいけません。そうすることで心の状態が改善されていきます。それゆえに、催眠感受性(催眠に入りやすさ)を観察しながらその人に最適な方法を模索しながら進めていきます。回を重ね催眠に慣れてくればくるほど違ったアプローチも可能になり、催眠にほとんど入りにくい人でも、より的確に原因を把握できるようになり、心をほぐしていくことも容易になります。催眠に全く入れないという人は原則として存在しません。でも、言語を理解する能力がない、集中力が散漫で思考が組み立てられない人、精神病圏内に入っている一部の人は無理というしかありません。そうでなければ、人は催眠に誰でも入れるし、入った深さの程度に違いがあるだけです。ではどちらが治り易いかというと差はありません。ただ、催眠感受性が高い程、退行催眠は入りやすくはなりますが、完治させることに意昧があるわけですから催眠によく入るとか入れないとかはさほど気にする必要はありません。もちろんその人の催眠感受性によってやり方を変えていきます。
人は音楽を聞いたときに感じる感覚や、物を食べたときの味覚の能力などに違いがあるように、催眠を含め様々な分野において違った能力で処理しています。でも退行催眠の書物などに、このようにして忘れていた記憶がよみがえったと書かれていれば自分も同じように反応して同じような感覚で思い出すものと思い、そうならなければダメなような、うまくいってないように思ってしまいます。そんなことはないのです。催眠に入って遊んでいるわけではないので、目的となる過去の出来事が思い出され、原因として理解できればそれで十分なのです。
退行催眠療法でいう退行催眠と催眠による年齢退行が同一視され誤解を生むことがありますが、催眠療法に必要な症状の原因を探り出す方法として、幼児期に戻り指をしやぶったり、幼稚園時代のお絵かきを始めたり、小学生のときの言動を再現する必要など全くありません。心の病を治すために必要なことは、その当時の自分を今の自分が客観的に見つめながら、当時の苦しかった、耐えがたい苦悩などを精神的に再体験することを私は重要視します。もちろん必要に応じて、再体験している苦痛などが限度を超えないように催眠の技法によりコントロールできますので心配は要りません。
退行催眠のテクニックで過去のある時期を振り返るわけですが、何のためにそしてどのように振り返らなければいけないかが重要になります。いまの症状を作り出している、原因となっている過去のある時期、またはある時点において、その当時の自分がその状況をどのように感じ受け入れてしまったか。あくまでもその当時の自分を今の自分がもう一度体験し見つめなおすことが必要なのです。
ただ単に過去の記憶を思い出すだけでは何の意昧も持てません。症状を作り出している無意識の中に封じ込められた過去の体験を甦らせ、それを無意識の領域に抑圧せずにはおれなかった感情を修正し、その記憶を無意識の領域から解放してあげるために、今の自分の理性で当時を再体験させながら客観的に学ばせていくことで、しこりをほぐし症状を消し去っていくことが重要だと考えています。このような療法を私は退行催眠療法と呼んでいます。
退行催眠療法を行っていると、その人の過去をさらに通り過ぎて生まれる前の世界にまで戻っていくことがあります。これについては前世療法の中で触れていきます。生まれる前の別の人生にまで戻らなくても母親の体内に胎児として存在しているときのことが原因となっている場合がありそのときのことを解消することで治っていく場合さえあります。どちらにしても妊娠何カ月からどこまで胎児が記憶できるほど脳の発達があるか、言語が理解できるのかは分かりませんが、そのようなことを議論するのではなく、臨床の場において、相談者の無意識に存在しているその頃の心的ストレス、または、思い込みを解き放つことで、結果として治っていきます。






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